組織再編-ソリューション事例
経営方針の相違から経営者 [株主] 間に生じた対立構造を「会社分割」を活用して解消した事例
「IT関連K社」の事例
経営方針の相違から経営者(株主)間に生じた対立構造、共同経営で事業をスタートさせた会社でよくある話です。
創業当初は、志をひとつに船出した会社も、何年かたちビジネス環境の変化など諸要因から、経営者間の信頼関係という歯車が少しずつ狂い始め、いずれ修復不可能な対立構造に発展し、転覆・座礁という危険にさらされることがあります。
この事例は、このような危機に陥った中小企業が、当事者の利害関係を交通整理し、経営者・株主それぞれにとって建設的でより納得性を高めるソリューションツールとして、M&Aスキームを採用し、ひとつの会社が身二つとなりそれぞれが新たなスタートをきる、というシナリオです。
ではそのプロセスを追ってみていきましょう。
【K社基本データ】
- 資本金
- 1,700万円
- 従業員数
- 19名
- 売上高
- -
| K社の詳細データ |
|---|
| 【設立】2000年 【経営陣】代表取締役A/取締役B[開発部門統括]/取締役C[制作・DTP部門統括] 【株主構成】経営陣(代表取締役A:36%/取締役B:21%/取締役C:25%) その他株主(4名18%[D・E・F・G]) (注) 発行済株式はすべて「普通株式」かつ「譲渡制限」 |
■ 問題点
下図のとおり、設立当初よりの経営陣であるA社長と、開発部門を統括する取締役Bのグループ、そして設立2年後に制作・DTP部門の統括取締役に就任したCとの間の経営方針の相違による対立構造です。
▼K社経営陣の対立構造

当初、A・Bサイドが、Cに歩み寄るかたちで関係修復を試みますが、一方のCは会社経営からの離脱の意思が固く、同時に会社へ出資額の返還を要求しており、もはや信頼関係は喪失しています。
また、従業員のモラル低下などの悪影響も生じつつあり、早急の事態修復と軌道修正により経営安定化を図る必要があります。
■ 付帯状況
- 取締役Cの統括する制作・DTP部門の業績は安定している。
- その制作・DTP部門の業績は、Cと取引先の人的関係がベースになっており、Cが経営から離脱することにより、K社の業績にマイナスの影響が出ることは避けられない。
- 経営陣以外の株主4名はCとの結びつきが強い(Cの働きかけでK社に出資した経緯あり)。
Cは経営からの離脱と引き換えに、K社に株式の買い取りを要求している(本来会社は株主からの株式買い取り請求に応じる義務はなく、また一方で会社側に「自己株式の取得」に対する一定の制限がかかる)。 - Cに自身の統括する事業をK社から買い取るだけの資金の余力はない。
アイデア1:経営陣の考えた解決策 ~ 株式の買い取り ~
AとBは問題解決のために以下2つのアイデアを持っていました。
- AがCの要求どおりC所有の全株式を買い取る
- K社がCの要求どおりC所有の全株式を買い取る
1. はAがポケットマネーでCの株式を買い取る考えです。一見最も手っ取り早い解決策のように見えます。
一方2. は、「自己株式の取得」にあたり一定の制限がかかりますが、仮にこの問題をクリアできたとしても、相当額のキャッシュが社外に流出することになります。
あともうひとつ留意すべきは、経営陣以外の株主(D・E・F・G)4名は、上のとおりCとの関係の強い株主で、上の1.2.を認めてしまうと、今度は彼らも株式の買い取りを請求してくる可能性が高く、経営上大きなダメージにつながることは容易に予測できます。
以上より、いずれも根本的解決策とはならないことがわかります。
アイデア2:M&Aスキームの採用 [1] ~ 事業譲渡 ~
そこで第2のアイデアです。
新会社を立ち上げ(K2社とします)「事業譲渡」というM&Aスキームを使って、Cの統括する部門をK社から買い取り、受け皿となるK2社に移管させます。これにより、「利益」を生むCと事業の関係が新会社で生き続けることができ、事業継続によりCもここから「配当」を受けることで、長期的に投資を回収することができます。
しかしこのスキームでの問題は、新会社K2社より同部門を買い取るにあたって「キャッシュ」が必要という点です。現実問題、Cに現金を拠出する余力はありませんでした。
アイデア3:M&Aスキームの採用 [2] ~ 会社分割 × 株式カスタマイズ ~
そこで私たちが提案したのが、「会社分割」(分社化)に「株式カスタマイズ」を組み合わせ、K社を2つに分割するスキームです。
同スキーム採用により、外形上は上の「事業譲渡」とほぼ同じ効果を得ることができますが、決定的に違うのが事業譲渡でネックとなっていた「現金」の拠出が不要であるという点です。
つまり「現物出資」で事業とこれに関連する財産を移転させることが可能となるのです。
同スキームの概要は以下のとおりです。
▼K社分社化のフロー[原型]

[図-2 原型] はK社の現状を表しています。
「会社分割」を使って2つの事業を分割し、A・Bと開発部門の関係をK社に残し、Cと制作・DTP部門の関係を同時に新設するK2社を受け皿に移管します。この時、Cと結びつきの強い株主D・E・F・Gの出資も併せて「株式カスタマイズ」を活用しK2社に移します(全株主の「同意」を得ます)。
そして、制作・DTP部門に在籍する従業員も上の動きに連動し新会社K2社へ自動的に移籍します。 (ここでは従業員の「同意」は必要ありません)
▼K社分社化のフロー[完成型]

ところで、この会社分割では「現金の拠出は不要」と言いましたが、実際にはK2社設立の際の諸費用や、K2社の当面の運転資金などは別途必要になります。今回の事例では、設立関連費用はK2社の負担とする一方、運転資金等についてはK社がCに対する功労の意味で役員退職金を用意し、これに相当する額を新会社K2社に移管させその一部に充てます。これによりK社のCへの経済的配慮も尽くすことができます。
さらに、新たな新会社をスタートさせるということで、K2社の株主となるD・E・F・Gより、カスタマイズ株式で小口の出資を集め運転資金等の不足分に充てます。
以上、「会社分割」というM&Aスキームが、K社の経営危機に対し劇的なまでにすっきりとした解決策を提供してくれました。しかも、関係当事者の利益を調和させたWin-Winのかたちで、お互いが気持よくリスタートをきることができました。この事例で活躍した会社分割と株式カスタマイズというビジネスツールの組み合わせは、「会社の細胞とDNAの分裂をプログラミングする」役割を果たしているかのようです。
このようにM&Aスキームは、大企業間の「買収」ツールとして使われるものではなく、中小企業のビジネスシーンで活用できることがおわかりいただけると思います。





![経営方針の相違から経営者 [株主] 間に生じた対立構造を「会社分割」を活用して解消した事例](/img/solution/04.jpg)
